
3
診 断 基 準
診断が難しいのも特徴です
ME/CFSは一般の保険診療で認められている血液検査、CT検査やMRI検査では異常がみられず、診断が難しいことも特徴です。また全国的に専門医が極めて少なく、適切な診断や治療を受ける機会がないまま、無理を重ねて重症化したり、孤立無援状態になっている患者さんも少なくありません。
■ 臨床診断基準
(厚生労働省研究班2017年)
6か月以上持続ないし再発を繰り返す以下の所見を認める
(医師が判断し、診断に用いた評価期間の50%以上で認めること)
1.強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下
病前の職業、学業、社会生活、個人活動と比較して判断する。体質的というものではなく、明らかに新たに発生した状態である。過労によるものではなく休息によっても改善しない。
2.活動後の強い疲労・倦怠感
活動とは、身体活動のみならず精神的、知的、体位変換などの様々なストレスを含む。
3.睡眠障害、熟睡感のない睡眠
4.認知機能の障害 または 起立性調節障害
■ 診断に必要な最低限の臨床検査
(1) 尿検査 (試験紙法)
(2) 便潜血反応(ヒトヘモグロビン)
(3) 血液一般検査
(WBC、Hb、Ht、RBC、血小板、末梢血液像)
(4) CRP、赤沈
(5) 血液生化学
(TP、蛋白分画、TC、TG、AST、ALT、LD、γ-GT、BUN、Cr、尿酸、血清電解質、血糖)
(6) 甲状腺検査(TSH)、リウマトイド因子、抗核抗体
(7) 心電図
(8) 胸部単純X線撮影
■ 鑑別すべき主な疾患・病態
(1) 臓器不全
肺気腫、肝硬変、心不全、慢性腎不全など
(2) 慢性感染症
AIDS、B型肝炎、C型肝炎など
(3) 膠原病・リウマチ性、および慢性炎症性疾患
SLE、RA、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患、慢性膵炎など
(4) 神経系疾患
多発性硬化症、神経筋疾患、てんかん、あるいは疲労感をひき起こすような薬剤を持続的 に服用する疾患、後遺症をもつ頭部外傷など
(5) 系統的治療を必要する疾患
臓器・骨髄移植、がん化学療法、脳・胸部・腹部・ 骨盤への放射線治療など
(6) 内分泌・代謝疾患
糖尿病、甲状腺疾患、下垂体機能低下症、副腎不全など
(7) 原発性睡眠障害
睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなど
(8) 精神疾患
双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症など
■ 共存を認める疾患・病態
(1) 機能性身体症候群(FSS)に含まれる疾患・病態
線維筋痛症、過敏性腸症候群、顎関節症、化学物質過敏症、間質性膀胱炎、機能性胃腸症、月経前症候群、片頭痛など
(2) 身体表現性障害(DSP-IV)、身体症状症および関連症群(DSM-5)、
気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)
(3) その他の疾患・病態
起立性調節障害: 体位性頻脈症候群(POTS)を含む若年者の不登校
(4) 合併疾患・病態
脳脊髄液減少症、下肢静止不能症候群(RLS)
病気の見きわめ
PS (Performance Status) による疲労 ・倦怠感の程度
PS
0
倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限をうけることなく行動できる
PS
1
通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずることがしばしばある
PS
2
通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
PS
3
全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、
自宅にて休息が必要である ※1
PS
4
全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、
自宅にて休息が必要である ※2
PS
5
通常の社会生活や労働は困難である。軽労働は可能であるが、
週のうち数日は自宅にて休息が必要である ※3
PS
6
調子の良い日には軽労働は可能であるが、
週のうち50%以上は自宅にて休息している
PS
7
身の回りのことはでき、介助も不要であるが、
通常の社会生活や軽労働は不可能である ※4
PS
8
身の回りのある程度のことはできるが、
しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している ※5
PS
9
身の回りのこともできず、
常に介助がいり、終日就床を必要としている
● 疲労・倦怠感の具体例(PSの説明)
※1:社会生活や労働ができない「月に数日」には土日や祭日などの休日は含まない。
また、労働時間の短縮など明らかな勤務制限が必要な状態を含む。
※2:健康であれば週5日の勤務を希望しているのに対して、それ以下の日数しかフルタイムの勤務ができない状態。
半日勤務などの場合は、週5日の勤務でも該当する。
※3:フルタイムの勤務は全くできない状態。ここに書かれている「軽労働」とは、数時間程度の事務作業などの身体的
負担の軽い労働を意味しており、身の回りの作業ではない。
※4:1日中、ほとんど自宅にて生活をしている状態。収益につながるような短時間のアルバイトなどは全くできない。
ここでの介助とは、入浴、食事摂取、調理、排泄、移動、衣服の着脱などの基本的な生活に対するものをいう。
※5:外出は困難で、自宅にて生活をしている状態。日中の50%以上は就床していることが重要。
判断基準の一部を満たしてないけれど、原因不明の慢性疲労が認められる場合、特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察する。